東京とんかつ会議 第135回 殿堂入り審議 洋食フリッツ ロースとんかつ(1500円)
肉3、衣3、油3、キャベツ2、ソース3、御飯3、サラダ3、特記エビフライ1点合計21点(各項目3点満点、特記項目含め25点満点)
「フライの概念が変わったんです」。
「フリッツ」の店主田苗見(たなみ)さんは、かつて働いた、赤坂「グリル旬香亭」(閉店)での経験を思い出して、目を輝かされた。食材、油、衣、揚げ方、全てが今まで習ってきたことと違っていたという。その後赤坂「フリッツ」(閉店)が出来て移り、ますますフライの虜になっていく。
やがて独立し現在の店を構えるが、オーナーである斉藤元志郎シェフの許可を得て「フリッツ」という店名を譲り受けた。
ロースとんかつは、姿が端正で美しい。肉はきめ細かく、噛む喜びがあって、ロースカツを食べたぞという喜びがある。またサクッと揚げきりのいい中粗衣は、肉に密着し、香りにコクがあって、肉を生かしている。
脂部分もすうっと溶けて食感がいい。そのあたりを意識しているんですか? と聞くと、「脂身には下味の段階で肉よりも多めに塩を打っています」と答えられた。
こうした洋食譲りの丁寧な仕事が随所にいきている。例えばとんかつにつくミニサラダは、実にみずみずしく、ドレッシングのあえ具合も良く、作り置きでないのが伝わってくる。
洋食店ゆえに味噌汁がないので点数が入らないが、それでも殿堂入りを果たした。もしあれば23〜4点という高得点を得ていた、秀逸なトンカツである。和辛子ではなく、ディジョンマスタードが添えられるが、カツにたっぷりつけても合う。特に端の脂の多い部分との相性がいい。
特記として、3300円という高価であるが、十分なお値打ち感のある「伊勢海老のフライ」を上げた。素晴らしい。今まで食べてきた伊勢海老料理の中でも、抜きん出ている。ただ敢えてその詳細は書かない。来店して食べて驚いて欲しいからである。
ああ。全メニューを制覇したくなる店である。